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知れば知るほどうまくいく〜障害者雇用エピソード100 障害者雇用コンサルタント 初瀬勇輔氏トークコラム
知れば知るほどうまくいく〜障害者雇用エピソード100 / 障害者雇用コンサルタント 初瀬勇輔氏トークコラム
 
2020東京パラリンピックの開催が決定したこともあり、年々増加を続けている「障害者アスリート雇用」。初めて障害者を雇用する企業にとっても最適な、そのメリットは?──今回は、社員アスリートとしてパラリンピックの大舞台にも立った初瀬さんならではのエピソードです。
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episode6:第6話 アスリートと一緒に夢を見よう!
第6話 アスリートと一緒に夢を見よう!
 

実行簡単、メリット無限大のアスリート雇用!?

こんにちは。障害者雇用コンサルタントの初瀬です。

昨年は、ソチオリンピック・パラリンピック、FIFAワールドカップという2つのビッグスポーツイベントが大きな感動と興奮を与えてくれました。選手たちの活躍に一喜一憂した方も多いのではないでしょうか。

来年にはリオオリンピック・パラリンピックも開催されます。この一年間はさまざまな競技でリオへ向けての熱い闘いが繰り広げられることでしょう。

さて、2020東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したことで、障害者スポーツもメディアでたくさん紹介されるようになりました。

挑戦を続ける障害者アスリートの姿には大きな感動と勇気をもらえます。今回は、そんなアスリートたちのお仕事状況についてのお話を。

障害者アスリートの世界でも、海外の選手の多くはプロ化しています。国家として選手の生活からすべて面倒を見ている国も増えてきているようで、パラリンピック強豪国では職業として競技をしているという選手も多いようです。

日本はと言うと・・・

オリンピックに代表されるアマチュアスポーツでは、企業が実業団として選手を雇用し、その競技活動をサポートするというのが一般的です。

障害者アスリートでも、企業に雇用され、サポートを受けている人が増えてきましたが、残念ながら、オリンピック選手と比べると、まだまだその数は少ないですね。

・・・ということで、今回は、実行簡単、メリット無限大の障害者アスリート雇用についてお話していきましょう。
 

メダルを獲ったけど、給料がほとんどない!?

近年のパラリンピックは、メダル獲得はおろか、日本が出場枠を獲ることすら厳しくなってきています。私も選手の一人としてリオ大会への出場も目指していますが、世界のレベルが急激に上昇していることを強く肌で感じています。

世界と対等以上に渡り合っていくためには、選手は質量ともに十分な練習を行う必要があります。そして、パラリンピックまでの4年間、出場権獲得のために国際大会に出場して実績をあげる必要があります。

練習、合宿、国内大会、国際大会・・・でスケジュールが埋まっていく中、職場での仕事もおろそかにできず、有給休暇をそれらの参加日程にあて、収入の大半を遠征費用にあてている──というのが、ほとんどの障害者アスリートの現状ではないでしょうか。

会社を休んでパラリンピックへ参加したので、メダルを獲ったけど、その月の給料がほとんどなかった、なんていう話を何人もの選手から聞きました。

収入面での不安、長期の休みをたびたびもらうことの精神的不安(上司や同僚への心苦しさや気疲れなど)は、競技力向上を目指すアスリートにとって、大きな悩みの1つです。
 

かくいう私も、社員アスリートでした。

パラリンピックの競技レベル、大会レベルは年々急速に高まっています。昔は想像できなかったくらい、その舞台で結果を残す選手たちはスーパーアスリートとして海外ではリスペクトもされています。

だからでしょう、パラリンピックで活躍するアスリートを見て、障害者アスリートの雇用を考える企業も増えてきました。

障害者アスリート雇用は企業も当事者もWin-Winの関係になれる素晴らしい雇用です。

かくいう私も、北京パラリンピック出場当時は企業に所属し、社員アスリートとして活動していました。

自分で言うのも何ですが、企業にとっても、自分にとっても、メリットいっぱいだったと思います(笑)。

私は、2007年3月、大手人材会社の特例子会社に入社しました。視覚障害者柔道の選手として活動をして間もない頃で、全日本選手権の優勝経験、国際大会への出場経験はありましたが、アスリートとしてではなく、一般社員としての採用でした。

当時の私は障害者スポーツの競技活動に対して会社から支援してもらうことなどまったく想像もしていなかったので、ただただ社会人としてしっかりしようということばかり考えていたように思います。入社の際に視覚障害者柔道の選手であることは伝えてありましたが、とくにそのことで優遇されることもありませんでしたし(笑)。

状況が変化したのは、入社して10か月後、北京パラリンピック視覚障害者柔道の日本代表に内定してからのことです。

本社広報の方から「パラリンピック出場が決まったのであればぜひ支援していきたい」とのお話をいただきました。

そして、会社としてそれまでスポーツ選手の雇用をしたことがなかったとのことだったので、どういった支援がいいのかを広報の方と一緒に考えてさせていただきました。
 

心置きなく練習をし、北京の舞台に立つことができました。

まず、大会・合宿への参加を特別休暇としていただきました。それによって、有給休暇の日数や給与の心配をしなくてよくなり練習や試合に集中できるようになりました。

また、競技活動にかかる費用についても支援をいただきました。練習の際のトレーニングジムの利用料やウェアなどの購入費も予算に加えていただきました。現在では、多少改善されていますが、以前は国際大会の参加の際にかなりの額を自己負担することは当たり前で、資金面のやりくりができずに競技を辞めてしまった選手も数多く見てきましたので、本当に助かりました。

このような大きな支援を受けることができたおかげで、心置きなく練習をし、北京パラリンピックの畳の上に立つことができました。

結果は・・・聞かないでください(笑)。

メダルを獲得した選手に指導1つの僅差で負けてしまい、期待に応えることはできませんでしたが、精一杯悔いなく闘うことができました。

北京パラリンピック後も引き続きアスリートとしての支援をいただいたのですが、2010広州アジアパラ競技大会で金メダルを獲得したときは、会社の応援に応えることができたという点でも嬉しかったですね。職場の同僚をはじめ会社の皆さんへの感謝の気持ちにあふれたことを昨日のことのように覚えています。
 

雇用する企業にもメリットはある!?

私の体験からもおわかりいただけるかと思いますが、アスリートとしての雇用は選手にとっては本当にありがたい雇用の形です。では、雇用する企業にはメリットはあるのでしょうか・・・?

もちろんあります!(笑) 代表的なメリットを3つ挙げましょう。

まずは障害者雇用率のアップです。

障害者雇用の思いはあっても、雇用率を達成できていない企業はたくさんあります。仕事の創出、スペース確保、インフラ整備、担当者の育成・・・などなど、クリアしなければならないと思われる課題が多く、なかなか初めの一歩が踏み出せない──そんな企業に障害者アスリート雇用はおすすめです。

出勤の頻度や業務内容を調整することで、自社にあった雇用の仕方を創出しやすい雇用の形と言えるでしょう。

次に、障害者雇用に対する社員への啓もう活動、社内のモチベーションアップです。

障害者雇用をはじめるとき、どうしても社員は構えてしまいます。人事も含め、ほとんどの社員の障害への理解が足りないからです。

障害者アスリートが入社すると、その理解が加速度的に進みます。そして、さまざまな困難を乗り越え、挑戦を続けるアスリートの姿を間近で見ることで、社内の雰囲気は格段によくなり、モチベーションが高まります。

最後は、広告効果です。

障害者スポーツへの注目度が高まっていることは、皆さんご存じのことと思います。パラリンピックで活躍した選手はもちろん、そうでない選手にも多くの取材や講演依頼、イベント出演などの機会があります。

その際に所属企業の名前が必ず取り上げられますので、会社名を広く知ってもらう大きなキッカケとなります。

注) パラリンピック日本代表選手の場合は、パラリンピックの公式スポンサーとの兼ね合いもあるため、広報活動の際には関係機関への確認が必須となります。
 

最適な雇用の形を見つけるとWinWin!

どういった雇用をすればいいのか。そこも気になるところでしょう。

雇用する企業、雇用されるアスリートの状態によって、最適な雇用の形を見つけるのが、企業にとってもアスリートにとってもWinWinとなることにつながります。代表的な3つの雇用パターンを紹介しましょう。

その(1)は、普段は通常通りに勤務し、パラリンピックなどの国際大会や合宿の際に特別休暇(勤務扱い)とする方法です。

普段は一緒に仕事をしているので、社内の障害者アスリートを応援しようという雰囲気がとてもよくなります。アスリートの練習時間があまり取れない反面、仕事のスキルが身につくので、引退後の不安解消にもつながります。 ちなみに、私はこのパターンでした。

その(2)は、ほとんど出勤の無いパターンです。

アスリートは、在宅勤務で、練習に専念し、広報活動や講演活動で会社に貢献します。会社への帰属意識が生まれにくい一面があるので、社内報やニュースリリース、ブログなどで社員にアナウンスすることで一体感を高める必要はありますが、練習時間を十分に確保できる点はアスリートにとっては魅力的です。

その(3)は、(1)と(2)を合わせたものです。

週に2〜3日の出勤、もしくは時短勤務とする方法です。練習時間を確保しながら、ビジネススキルを身につけることができます。

単純に1〜3のいずれかということではなく、これらを組み合わせたり、少し変えたりすることで、企業とアスリート双方にとって最適の雇用の形が見つかることと思います。
 

企業が障害者アスリートを強くする!?

夢を持ち、実力もありながら、学校を卒業し、就職するタイミングで競技を引退する選手も少なくありません。アスリート就職ができず、競技活動を辞めざるをえなくなってしまうのです。

障害者アスリートは日々、不安の中で練習に励んでいます。やはり収入がなければ安心して練習に励むことはできません。

競技活動を認めてもらえる企業に就職し、収入の基盤を獲得でき、安心して練習や遠征、国際大会に臨むことができたら、アスリートたちの競技活動のレベルはどれほど高まるでしょう。

会社の仲間が応援してくれているということも大きな励みになると思います。応援してくれる人が増えれば増えるほど、最後の最後のひと踏ん張りのときの力となると私は信じています。
 

障害者アスリートと一緒に夢を見ましょう!

2020東京への出場を目指している若い障害者アスリートたちに企業就職の道がもっと広がれば・・・と思います。

実績の少ない選手たちにはまだまだアスリートとしての就職は狭き門というのが実状ですが、パラリンピックの経験のないこれからの選手たちを雇用し、一緒に2020東京という夢を見ていただける企業が増えてほしいと思っています。

障害者アスリートの雇用は決して大企業だけのものではありません。

実は、障害者アスリートの雇用というのは、障害者雇用をはじめるにあたってのハードルが低いことが多いのです。

競技を通じ、人間的に鍛えられ、チームワークやコミュニケーション、自立心、積極性、チャレンジ精神などを磨いてきたアスリートたちは、さまざまな環境に適応しやすく、業務においても能力を発揮してくれる可能性が高いのです。

初めての障害者雇用で、障害者アスリートを採用するというのも、とてもおもしろいと私は思っています。

自社の障害者アスリートが成長し、会社も一緒に成長する、そんな夢を一緒に見ることができたら、本当に素晴らしく、最高だと思います。

障害者アスリートと一緒に夢を見てくれる企業がどんどん増えることを願っています。
 
 
 
 
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