スペシャル連載コラム「社会福祉士・青嵐さんの自立支援の現場から」障がい者福祉について考え続けるうちに〜「自立」とは何か?〜

第5回 日本の常識のもとで、その答えは見つかるのだろうか?

楽しみにしていたNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」(原作 司馬遼太郎)の放映がはじまった。

原作である小説は何度も読んだ。明治維新をやり遂げた人々が世界、とりわけ欧米文化を見て衝撃を受け、その輝かしいばかりの文化に近づこうと列強ひしめく世界という大河に飛び込み、翻弄されながらも国家というものの樹立に向けて全力を尽くした物語である。その壮大なストーリーをいったいどのように映像化するのか、小説で伝えようとしたことが本当に伝わるのかなど、いろいろと思いをめぐらせながら楽しく第一話を観させていただいた。

その時代にはその時代の、あるいはその世界にはその世界の「常識」がある。人々の辿ってきた歴史を紐解こうとするのであれば、その時々の「常識」を無視することはできない。また、人々が積み上げてきた記憶や歴史を無視して「常識」を考えることもできない。記憶や歴史の上に「常識」が成り立っているとも言える。

先に述べた明治という時代は日本文化に大きな変革をもたらした。眩いばかりの欧米文化を急いで取り入れたいと思った日本は列強各国に使節団を派遣し法律や制度などを持ち帰った。そして、健気にもそれらのすべてを日本語へと翻訳しようとした。異文化である。当然これまでの日本語には当てはまる言葉がない場合もある。言葉どころか概念すらないものもあっただろう。この時代には多くの新しい日本語が誕生した。これが現代語と定義される日本語である。何かの本で読んだところによると、驚くことに「友情」という言葉すら明治以前にはなかったらしい。そうなのである、現在私たちが使っている日本語も、実はその多くが日本文化に根差して生まれてきた言葉ではないのである。

言葉だけではない。法律や制度においても同様である。「福祉」や「自立」といった「概念」も、もともとは海外から輸入されたものであり、現在においても「ノーマライゼーション」「エンパワメント」などといったカタチで欧米から輸入し続けられている。

「福祉」という言葉は日本国憲法作成時にGHQ案の英語原稿を翻訳するときに「social welfare」に対応する言葉「社会福祉」としてでき上がったと言われている。「自立」は英訳すると「independence」となる。この言葉は私たちの「自立」という概念に合っているだろうか。これらの言葉がいつまでたっても私たちの中でしっくりこない理由は、もともと日本文化に根差してでき上がったものではないからではないだろうか。言葉を輸入したときに、咀嚼をしてみたもののうまく消化できずに現在に至っているからではないだろうか。

今もって「福祉」に対する考え方は欧米と日本では明らかに違う。歴史に裏付けられた「常識」も違う──「自立」とは何ぞやを考えるとき、言葉の本質に込められた「常識」を理解せずに、その答えは見つからないのではないかと思えてくるのである。
第6回(最終回)へ続く。
 
青嵐 
生活介護・就労継続支援B型多機能型事業所職員。福祉の世界にとらわれない客観的かつ冷静な視線で、障がい者の「自立」とはどんなことかを考えて続けている社会福祉士。かたわら、伝統技術の習得に真剣に取り組む藍染師でもあります。
 
スペシャル連載コラムを読んだ感想を聞かせてください。
自立支援施設の職員の方、特別支援学校の先生の意見なども大歓迎! ワッホー編集部までお気軽に、そして積極的にお寄せください。
福祉環境をもっと素晴らしいものにするために・・・前向きな意見をお待ちしています!
 
ページTOPへ