ワッホーインタビュー
2010年5月20日_絵画展 口と足で表現する世界の芸術家たち 小平展(東京都) 画家・古小路浩典(こしょうじひろのり)氏インタビュー
画家・古小路浩典さん、登場!
芸術家は気難しい? 愛想が悪い? いえいえ、そんなことはありません。「絵画展 口と足で表現する世界の芸術家たち 小平展」で創作の実演を見せてくださった画家の古小路浩典さんと梅宮俊明さんに実演の合間に声をかけさせていただきました。アーティストとはいえ一人の人間。悩みもあれば、お茶目なところもあります。気さくなお二人のトーク、ぜひお楽しみください。
>> 梅宮俊明(うめみやとしあき)氏インタビューはこちら
古小路浩典(こしょうじひろのり)氏プロフィール●1963年岡山県生まれ。東京都在住。中学3年生のとき、器械体操クラブ活動中の転落事故により頚髄を損傷。18歳のとき、リハビリテーションの一環として絵画活動を開始。以降個展、グループ展などで作品を発表。美術展に出展し入選なども。口と足で描く芸術家協会準会員。
2010年5月20日_絵画展 口と足で表現する世界の芸術家たち 小平展(東京都) 画家・古小路浩典(こしょうじひろのり)氏インタビュー

勉強でも趣味でもどんなことでもいい。1つのことを続けてほしい。

ワッホー 梅宮さんのお話を聞かれて、いかがですか?
(古小路さんのインタビューは、梅宮さんのインタビューの後に行われました。)

古小路さん 絵に悩む時期というのもあっていいと思います。自分も、昔描いた絵を観ると「青いなあ」(笑)と思いますが、その時期があって、今があるんですよ。どうでもいいような細かいことにこだわって、難しく考えてみたりした時期もありましたが、そこを抜けて、楽しくなってきました。「たかが絵」なんですよ。でも、「好きだから描いている」、それでいいんですよ。

ワッホー いい具合に余計な力が抜けてきた感じですね。

古小路さん 「これはオレにとって大切なものだ!」「この階段を乗り越えないとうまくなれない!」「表現とはこういうものだ!」「これはオレの自己表現だ!」・・・なんて(笑)、若いときは無駄に力んでいました。

ワッホー どんな分野でも本気で取り組もうとすると、必ずそういう時期がありますね。後から思い返してみると、恥ずかしいくらい青い時期が(笑)。

古小路さん 懲りすぎたり、熱く語ったりしても、昔は絵の技量が追いついていなくて、余計落ち込んだりもしました。能書きと画力がアンバランスだったんですね。

ワッホー それを乗り越えると円熟期に入ります。

古小路さん そうですね。今はそこそこ技術も身につけているし、いろいろ描けるようになった。力まず楽しく描けるようになってきました。実演など見てくださる方々にも「本当に楽しそうに描いているなあ」と、そこら辺が伝わればいいかな、と。

ワッホー 古小路さんは本当に楽しそうに描かれていますね。

古小路さん とかく障がいをもった画家が描いていると、「たいへんそう」とか「努力しているなあ」とか思われがちですが、そんなことではないんですよ。自分たちはただ好きだから描いているだけなんですよ。描かなくてもいいのに描いているんですから(笑)。

ワッホー 確かにその通りですね(笑)。たいへんだったら、苦しいんだったら描かなければいいのに、皆さん、描かれていますものね。お話をお聞きしていても、楽しい気分になってきました(笑)。

古小路さん もちろん、深い悲しみやつらい思いを表現して描くのもスゴイことだし、人を感動させられると思いますが、残念ながら自分はそうではない(笑)。「好きだ」「楽しい」という思いで描いているので、観ている方々にも、ぜひそのあたりを観ていただいて「楽しい」「なんとなく幸せ」と思ってもらえたら嬉しいですね。

ワッホー 古小路さんの画風には写実のものとファンタジーのものの2種類があるようにお見受けしますが?

古小路さん 写実は自分がどこまでしっかりモノを見て描いているか、技術を磨く目的で描いています。画家にとって、モノをよく見ることはとても大切ですからね。ファンタジーの方は自分にとっての「お楽しみ」です。自分でルールもストーリーも作れるおもしろさというか、映画の一場面のような絵を考えて描くのは楽しいです。

ワッホー 絵の設定から自分の頭の中で考えるわけですね?

古小路さん はい。たとえば「バナナが1本、野原にありました」。さあ、その後どうなる? 「リスが拾って・・・」とか自由にストーリーを考えるわけです。楽しいですねえ。写実のものは神経をすり減らす部分もあるので、ファンタジーはいい息抜きにもなります(笑)。写実で犬の細かい描写をしたら、次は転がっているファンタジーの熊を描いてみたり(笑)。

ワッホー 写実とファンタジーでよいバランスを取られているのですね。古小路さんは絵本の挿絵なども描かれていますが、子供たちに向けてメッセージをいただけますか?

古小路さん 今の時代はいっぱい選択肢があるので、あきちゃったりして、なかなか1つのことを続けられないかと思いますが、1つのことをやり続けると必ず伸びるし、続けること自体が自分自身の柱・・・生きていくうえでの気持ちの支えになると思うので、勉強でも趣味でもどんなものでもいいと思うので、1つのことを続けてほしいですね。

ワッホー 自分の中に柱をもっているのともっていないのとでは、人としての強さが違います。

古小路さん 子供の頃の自分は健康が自慢でした(笑)。器械体操をやっていたのですが、それが柱になっていました。ヒーロー物とかに憧れていたので、自分の中の「カッコイイ」はバク転のできる人だった(笑)。だから、勉強できなくても(笑)、練習が厳しくてカラダがキツくても、バク転ができることが心の支えになっていた。後ろ向きに跳ぶのはやはり怖いですが、試合で技が決まったときなんか、「やったー!」という気持ちでした。

ワッホー 今は「絵を描くこと」が柱になっている?

古小路さん はい。バク転ができなくなったときは絶望しましたが、絵と出会い、10年、20年と描いてきて、今はこれが自分の柱になっています。なにがあっても「好きなことやれているからね」といえるというのは心の支えになりますね。

ワッホー 子供の頃体操だったものが、今は絵になった?

古小路さん そうですね。体操を心の支えにしていた頃と、変わりないかもしれませんね。1枚目の絵を描き上げたときの達成感は、身伸宙返りを決めたときと同じ感じでした(笑)。苦しみながらもやり遂げたときのあの快感はなにものにも変えがたい。クセになります。ぜひ、子供たちにはずっと続けられるものを見つけてほしいし、大人たちが見つけてあげてほしいと思います。自分の中に柱をつくれば、変なことで悩んだり、小さなことで挫けたりはしないですから。

ワッホー 当然のことですが、大人の責任は大きいですね。

古小路さん 今は大人も長く続けられないですからね(苦笑)。

ワッホー 確かに。大人の中にも、自分の柱をもっていない人はたくさんいます(苦笑)。

古小路さん 今は・・・カッコイイ、子供がマネたくなるような大人が少ないのかもしれません。もっと、1つのことに一生懸命取り組む大人がいてもいいと思うのですが。

ワッホー 大人が、子供にとっての「よい見本」にならないとダメですね。

古小路さん いや、「好きだから」続けているでいいと思いますよ、見本になんてなろうとせずに。

ワッホー あ、確かに、「見本になろう」なんて言っている時点で、子供の顔色見ているようでカッコ悪い気もします(笑)。

古小路さん 仕事でも趣味でも「好きなことやってていいな」とか「楽しそうにやっているな」とか、見ている子供たちに羨ましがられるような大人が増えたら、きっと子供たちも大人を見習うと思うんですよ。

ワッホー 子供に羨ましがられるくらい「楽しく頑張っている」大人になりたいものです。お互いに頑張っていきましょう(笑)。
本日はありがとうございました。
(取材:2010年5月20日(木))
 
 
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